「カスタマーサクセスマネージャー」という言葉は、カスタマーサクセスの役割を実践する責任者のことを指します。マネージャーとついているからといって必ずしもチーム全体のマネジメントをしている役職という意味合いではなく、一般的にカスタマーサクセスを担当し、実行している人であればカスタマーサクセスマネージャーと呼ばれます。英語ではCSM(customer success manager)と略します。
文字通り、顧客を成功に導くためにどのようなアクションを取れば良いのかを考え、施策を立ててチームをまとめる役割を担っています。
それでは、カスタマーサクセスマネージャーとは、どのような役割をになっているのでしょうか?
具体的には、以下の3つです。
基本的にSaaSビジネスはサブスクリプション型で、顧客がやめたいときにいつでも止めることができるため、「継続」が非常に重要です。カスタマーサクセスマネージャーにとって「お客様にどのようにサービスを継続してもらうか」が全てといっても過言ではありません。顧客に連絡し、製品やサービスを継続的に使用しているかどうかを確かめるのもカスタマーサクセスマネージャーの大事な仕事です。
こうしたフォローは非常に重要で、顧客を放っておくとサービスを導入しても結局使わずにいて、活用ができずそのまま解約、というケースが少なくありません。顧客が製品に価値を見い出せないと、継続的に利用してもらうことは難しくなります。
したがって、カスタマーサクセスマネージャーは、いかに顧客にサービスの価値を理解・実感してもらい、使い続けてもらうか、ということを常に考える必要があります。そのための指標として解約率を測り、一定以上、上がらないように管理します。
契約後にサービスの拡張や新サービスの契約などを行い、一社あたりの契約金額を増加させることもカスタマーサクセスマネージャーにとって大事な役割です。従来は営業担当が実施していた役割ですが、顧客のゴールや課題、現在の状況を把握しているカスタマーサクセスマネージャーの方が適している場合が多いため、近年ではカスタマーサクセスマネージャーの役割として認識されるケースも増加しています。
実際に顧客の支援をしているカスタマーサクセスだからこそ、顧客の状況に応じて追加で必要な提案をしたり、必要だと思えば別のソリューションやサービスを追加で購入してもらうなどの提案をすることができます。SaaS事業では、積み上げ型で収益を得るため、アップセルとクロスセルを積み重ね、LTVを上げるかが重要になります。そのため、追加受注の促進もカスタマサクセスマネージャーにとって重要な役割の一つです。
CSMは実際にお客様に対峙し、サービスの定着化を図るオンボーディングや提案などを行うので、顧客の声を拾いやすい役割でもあります。そのため、複数の顧客から共通した要望が出た場合や、改良した場合にインパクトの大きい機能について、プロダクト部門と話し合いのうえ、機能追加/改善のための議論をし、サービスや機能のPDCAを回すのもカスタマーサクセスマネージャーの役割です。
日々顧客と対峙し、運用をサポートしているということもあり、顧客の運用をサポートしていることもあり、サービスやプロダクトについての改良のヒントを常に収集できる立場にあるため、それらの情報を踏まえてカスタマーサクセスマネージャーがプロダクトやサービスに関与していきます。
次に、具体的なカスタマーサクセスマネージャーの業務内容はどのようなものがあるのかについて解説をします。
SaaSのカスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは、新規ユーザーが「自走」状態でサービスを活用できるまで導くプロセスのことです。ここでいう「自走」とはすなわち、ユーザーがサービスの使い方や仕様を理解し、自身の手でサービスを操作・利用することで、価値を実感できている状態を指します。
オンボーディングがうまく行っているかどうかで、その後の継続率の向上に直結するため、CSにとってオンボーディングの成功は、必須最重要課題です。オンボーディングの手法はさまざまであり、ユーザーの特性やサービスの特性によって、適した方法を検討する必要があります。
しかし、サービスの内容に関わらず、機能や活用方法を早期に理解してもらうことが重要で、それが出来ると、利用初期からユーザーに成功体験を提供することが可能となり、SaaSにおいて特に重要性の高い継続率の向上などに寄与します。
役割の部分でも説明したように、継続率の向上や、追加での受注を顧客に促すことも重要な業務の一つです。お客様の活用度合いや、課題を見極めてアップセル・クロスセルの提案をします。アップセル・クロスセルの意味は以下の通りです。
アップセル:自社の既存顧客に対して、より高額な商品・サービスの購入を促す営業手法。例)スマートフォンの機種変更を行う顧客に最新モデルをおすすめしたり、無料のお試しプランから全機能が使える有料版への移行を促したりすることなど。
クロスセル:複数の商品・サービスをあわせて購入してもらうように促す営業手法。例)パソコンを購入した際に、マウスや外付けハードディスクなどの周辺機器をあわせておすすめすることなど。
カスタマーサクセスマネージャーの役割において、解約率の低下が非常に重要であることは初めに説明をしましたが、顧客エンゲージメントの向上は、解約率の低下に非常に有効です。顧客エンゲージメントとは、顧客がサービスやプロダクトに抱く愛着や信頼などのプラスの感情のことを指します。顧客エンゲージメントが上がれば、必然的に顧客は長く、そして積極的に製品を使う傾向にあるため、解約の抑止や、LTVの向上に寄与します。
顧客エンゲージメントの向上のために近年注目されているのが「コミュニティマネジメント」です。具体的には、自社のコミュニティを運営し、コミュニティが健全に機能するように適宜アクションを行う業務です。例えば「サービスの会員サイト」や「SNS」などファンを集めるためのコミュニティを運用することがカスタマーサクセスでの仕事となります。成功すれば、webを介した顧客同士の交流やイベントなどを通じて製品や会社のファンを増やすことができます。
プロダクト品質の向上などハード面と合わせて、顧客の心を掴む「顧客エンゲージメントの向上」についてもカスタマーサクセスマネージャーの重要な業務です。
SaaS企業の場合、自社プロダクトやサービスを持っている場合が多いです。プロダクトやサービス作りにおいて、顧客からのプロダクトに対するフィードバックを製品に活かすことは重要な役割となります。CSは最も顧客と近く、そして深く顧客の課題を知ることができる立場にいるため、顧客の課題をプロダクトで解決するために、製品に対して深い考察を持ってフィードバックをすることが出来るのです。
具体的には、定期的にプロダクト開発部とのMTGを通して、方向性やアップデートの話し合いをしたり、そもそもお客様にサービスやプロダクトに対してのフィードバックをもらえるように働きかけを行います。より良いサービス/プロダクトを作ることで、顧客がサクセスへと近づくと共に、顧客が「自分の要望や、フィードバックが反映されている」と感じ、エンゲージメントの向上にもつながるので、非常に重要な業務です。
今回の記事では、カスタマーサクセスマネージャーの役割と業務についてまとめました。カスタマーサクセスの業務は、アップセル・クロスセルなどの営業のような要素がありつつも、コミュニティマネジメントやプロダクト・サービス改善など非常に多面的な要素・スキルが生かせる職種です。業務の幅が広い分様々な知見や経験も必要になるため、非常にやりがいがあります。
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